キハダと日野製薬
日野製薬は、信州木曽の地において、古くから伝わる「百草」(ひゃくそう)、「百草丸」(ひゃくそうがん)、「普導丸」(ふどうがん)をはじめとする生薬製剤を製造、販売しています。
これらの生薬製剤の主成分は生薬「オウバク」であり、ミカン科の落葉高木「キハダ」の周皮を除いた樹皮です。自然の恵みの生薬が、人々の身体の健康を維持し、長引く症状や繰り返す症状に働きかけます。これらの生薬製剤をつくり続け、未来へ継承するため、キハダは欠かせないものです。
現在、国内産のオウバクは年々採取量が減少し、入手が困難となっています。林業人口の高齢化や林業の衰退などが背景にあると考えられます。木曽は古くから薬草の宝庫と言われ、良質なキハダが生育していたことが、百草をはじめとする薬が現代に伝わる理由の一つと考えられます。
日野製薬は、木曽の豊かな自然と風土の中でキハダを大切に育て、将来の薬づくりに生かし、多くの方々の健康長寿にお役立ていただきたいとの願いを込めて、キハダの植樹を行っています。また、国内産オウバクを入手するため、多くの方々にご協力をいただき、キハダの皮むき、キハダ一本から買います活動などを実施しています。更に、キハダの実を採取し、種を取り出し育苗いただき、翌年の植樹を行っています。弊社の毎日の薬づくりは、キハダとともにあります。
キハダは成長に約25年の歳月を要します。キハダとともに季節の巡りを歩む中で感じるのは、日野製薬は自然の恵みであるキハダの命をいただいて薬づくりをしているということです。弊社の社員一人一人はその責任を忘れてはなりません。このため、キハダの樹皮はもちろんのこと、材、葉、実など全ての部分を余すところなく利活用したいと心から願っています。
また、国内産オウバクの入手が困難な理由の一つに、山林内でキハダを伐倒し、里へ下ろすための負担が大きいことも挙げられます。キハダの利活用を進めることで、収益性を少しでも向上し、貴重なキハダの木をご提供いただく山元の山林所有者の方々に還元したいと考えています。これがひいては、国内産オウバクの安定調達につながり、百草、百草丸、普導丸を未来へ継承することにつながると考えています。
私どもの社業はキハダとともにあります。キハダは多くの素晴らしいご縁をもたらし恵みを与えてくれます。自然の恵みであるキハダ、それを用いた薬づくりを伝えていただいた先人に感謝し、多くの方々の健康長寿に寄与する良質な製品とサービスのご提供、そして社業を通して社会に奉仕することを目指し、歩んでまいりたいと考えています。