縁(えにし)

2015年10月

十月に入ってから秋らしい気候になりました。朝夕の気温が低くなり、山里の木々も少しずつ色づき始めました。下旬には里の紅葉も見ごろになると思います。

昨年9月27日の御嶽山噴火から一年以上たちました。犠牲になられた方々のご家族には辛い一年であったと思います。
例年、夏になると御嶽信仰の信者の登拝と登山客・観光客でにぎわう御嶽山ですが、今年は入山規制があり、登山客や観光客を見かけることがほとんどなく、被災地としての厳しさを味わう一方で、多くの方から慰めや励ましの言葉をいただいたり、訪問していただいた企業や団体もあり、人の心の温かさに触れた一年でもありました。

2007年から夏山が始まる前の七月初旬に地元の行政や民間団体の関係者が参加して、黒澤口と王滝口の七合目から剣ヶ峰頂上までの登山道整備を実施してきました。一昨年から木曽町にある長野県林業大学校の一年生20名が実習作業として、参加するようになりました。若くて長時間の力作業ができるので、登山道に雨水がたまらないように、ツルハシを使って深く長く水の逃げ道を作ったり、緩んだ枕木の杭をハンマーで打ち込んだりする作業をしてもらうようにしました。その結果、整備の質が向上しました。

今年も7月2日に登山道整備を行いました。王滝口は田ノ原高原より上に行くことが出来ませんが、黒澤口登山道は八合目まで行くことができるので、六合目から八合目までの登山道整備を行いました。今年は木曽町の原町長をはじめとする役場の人やテレビ局などマスコミの取材者が同行したので、例年よりも参加者が多い、整備作業となりました。八合目の女人道で昼食休憩をして解散し、下山しました。
午後は東京から来た二人のボランティアの方と六合目から千本松までの登山道整備を行いました。昔はバスの終点が千本松であったので、千本松から登山を開始したようです。千本松から六合目までの間に、御嶽山三十八史跡巡りの黒澤口十番目の史跡「三笠山」と十一番目の史跡「白川大神」があります。この登山道は雨が降ると滑りやすく危険だったので、2010年に枕木を設置したり、倒木を除去するなどの整備作業を実施しましたが、久しぶりにこの道に入ったら、熊笹が生い茂り、二時間ほど熊笹狩りをしても登山道の四分の一程しか刈り取ることが出来ませんでした。後日、案内人組合の倉本さんに残った笹を刈り取ってもらいました。

今年は頂上まで登山ができないので、昔懐かしいこの道を登ってみたという信者の方が結構いたようで、整備した甲斐がありました。
このように御嶽信仰の信者の方々に支えられた一年でしたが、観光客が大幅に減少したことから、御嶽山の多面的な魅力が知られていないことを痛感しました。

登山しなくても魅力的な場所がたくさんあることをいかにアピールしていくかが今後の重要な課題です。例えば、個人的には雄大な御嶽山が見える開田高原は、浅間山が見える軽井沢よりも素晴らしい場所であると思っています。御嶽山にはたくさんの滝があるので、滝巡りも観光スポットとして良いと思います。さらに、黒澤口六合目から御嶽山随一の百間滝に行く道とこもれびの滝、不易の滝からヒノキの天然林のある油木美林を通り百間滝に行く道をうまく整備すれば、上高地に匹敵するくらい魅力的な場所になると思います。

御嶽山噴火は木曽地域に打撃を与えましたが、今までの問題点を知るよい機会にもなりました。問題点と課題の解決に前向きに取り組み、未来ある木曽となるようにしていきたいと考えています。
 


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