縁(えにし)
2010年11月
今年は秋に入っても暖かい日が続いたので、いつもの年よりも紅葉が遅れています。
数年前から「木曽丸ごと夢作り活動」というボランティア活動を行っています。この活動では、「①木曽地域の一体化、②地域遺産の保全、③子供たちに森林文化の継承」の三つの目標を掲げています。
木曽地域は香川県と同じくらいの広さがありますが、森林面積が九十三%を占めており、木曽川沿いと御嶽山麓周辺に約三万人の人が住んでいます。各地区ごとにはさまざまな活動を行っていますが、民間主導の木曽地域全体の活動はありませんでした。そこで、木曽十一宿のうちの奈良井、薮原、木曽福島の三箇所で行っていた氷雪の灯祭りを、木曽全域で行おうと呼びかけたところ、二〇〇八年の二月から毎年、木曽十一宿と漆器の里の木曽平沢、および、御嶽山麓の開田、三岳、王滝の合計十五箇所で行う「木曽路氷雪の灯祭り」というイベントとなり、冬の風物詩として定着しました。
地域遺産を語るほど知れば守るようになると考え、啓蒙活動のために「知って、語って、守ろう、日本の宝、木曽の地域遺産」というスローガンを掲げ、東京大学の西村幸夫教授などの講師をお招きして講演会を開催したり、実践活動として、七百年の歴史ある御嶽神社の宮司に認定していただいた三十八の霊場を巡る「御嶽山三十八史跡巡り」の仕組みを作り、普及活動を行っています。更に、訪れる人が少なくなった霊場を巡る参詣道が、荒廃して危険になっていたので、地元の案内人組合などの協力を得て、百間滝への参詣道の補修・開削と千本松から黒澤口六合目までの参詣道の修復を行いました。毎年七月初旬に行われる御嶽山の登山道整備に社員も参加しています。
毎年五月に木祖村の中学生を対象に、百草丸の原料のキハダやお六櫛の原料のミネバリの木などの広葉樹の植樹や、しいたけ菌の駒打ち作業を体験してもらっています。翌年秋に収穫したしいたけを手にして、生徒たちも喜んでいるようです。
日本ユネスコ協会連盟は、昨年、百年後の子どもたちに長い歴史と伝統のもとで豊かに培われてきた地域の文化・自然遺産を伝えるために、「未来遺産運動」を開始しました。「未来遺産運動」は、長い歴史を超えて人々が紡ぎ続けてきた文化遺産や、自然とともに生きる知恵や工夫の中でつくりあげてきた自然遺産という豊かな贈り物に光を当て、それらを未来に伝えていこうという人々の意欲を活性化させることによって時代を切り拓いていくことを目的としています。日本ユネスコ協会連盟は、日本の各地で行っている保全活動を支援するために、「未来遺産プロジェクト」の募集をしていて、毎年、10のプロジェクトを選定しています。
今年も六月三十日締め切りで募集があったので、木曽全域の地域遺産の保全と一体化・活性化のために、各地区で保全活動をしている人たちと連携して「未来遺産プロジェクト」に応募しました。具体的な活動としては、木曽街道沿いの景観の保全と一里塚の復元のような街道文化の保全に焦点を当てていく予定です。十一月初旬に東京大学の西村幸夫教授を委員長に、各界の委員からなる委員会で10のプロジェクトが選定されることになっています。是非、選定されることを願っています。
弊社創業者の故日野文平は、「社業を通じて社会奉仕をする」という社訓を残しましたが、自らは木祖村長時代に国の事業の味噌川ダムの建設に協力する中で、新しい道路を作ったり、建物を建て、村の基盤整備に多大な貢献をしました。
私は「木曽丸ごと夢作り活動」や「未来遺産プロジェクト」のソフト事業を通して、木曽地域の地域遺産の保全と一体化・活性化に貢献していく所存です。