木曽の便り
田島一心講と掛け軸
毎年、埼玉県にある御嶽神社(田島一心講)の山田國光宮司と信徒の方々は黒澤口からが御嶽山に登拝し、王滝口に下りてきて一泊された翌日に弊社王滝店に立ち寄っていただいています。埼玉県の御嶽神社は普寛行者が修業された場所であり、普寛行者直筆の掛け軸(さいたま市の文化財)があります。
このところ毎年夏山の登拝の折に持参された御嶽信仰の大先達の掛け軸を拝見させていただいております。一昨年は一心行者直筆の掛け軸、昨年は明岳院広山直筆の掛け軸を拝見させていただきました。いずれも普寛行者の弟子です。
今年は20日に立ち寄られ、覚明行者が描かれた掛け軸を持参されていましたが、弊社の故日野文平名誉会長の告別式」の日であったので、お会いすることができませんでした。山田先生のお話によると、黒沢口九合目の覚明堂(覚明行者の遺骸がおさめられている場所)で掛け軸の報告のお祈りをしたところ、突然大きな蝶が舞いあがってきて、一回転して消えたということです。さらに八合目に降りてきたときに、雷鳥の泣き声がするので振り返ってみたところ10羽以上の雷鳥が姿を現したということです。このような不思議な現象が起こるのは、この掛軸が由緒あるものと思われます。
山田先生から画家の署名を判読して欲しいと依頼されましたが、写真では判然としないので、残念ながら誰の作かはわかりません。どなたかご存知の方がおられましたらご連絡をいただきたいと存じます。
毎年このように御嶽信仰ゆかりの貴重な掛け軸が埼玉県の御嶽神社に集まってくるのは不思議です。
田島一心講は毎年布製の"おまねき"(左の写真)を持ってきて、弊社の店舗に置いていってくれます。昔はこのような"おまねき"を持参される講社は随分あり、定宿やなじみの店に置いていったようです。大正時代の写真で、木曽福島のいわや旅館の軒先にたくさんの"おまねき"がかけられているところを撮影した写真がありますが、これは後から来る信者の人たちに、定宿がどこか分かるようにするために使われたものと思います。弊社にも、昔、沢山の講社から頂戴したおまねきがあり、店舗に飾っています。
田島一心講は今でもこの慣習を続けている数少ない講社です。