伝承薬と漢方薬のはなしStory of Folk Medicine

漢方と生薬

漢方製剤と民間伝承薬をひっくるめて生薬製剤とする場合もありますが、

ここでは、下記の通り、生薬製剤を民間伝承薬とします。

中国医学

古代漢民族が漢代から三国六朝時代にかけて完成した一つの医学体系です。

漢方医学

五世紀初頭に日本に伝わり、奈良朝以来行われてきた中国医学につけられた日本製の呼び名を漢方と云い、江戸時代の初期から中期にかけて日本的に改良を重ねたものが、現在日本で行われている漢方医学です。漢方と言う言葉は、オランダ医学が日本に伝来し、それを蘭方とよんだことに対してつけられた言葉です。

陰陽五行説

中国医学は、陰陽説と五行説を融合した根本思想を、その理論的な基礎としています。古代中国の一つの世界観を示したものです。陰陽の循環思想は、元来尚書にみられる剛柔の思想が漢代に陰陽説として体系だてられたもので、五行説は人類の生活に必要な五つの素材、すなわち水、火、木、金、土の「民用五材」の思想に基づく説です。陰陽五行説は、陰陽と五行のバランスを日常生活の上でよく考え行動することを説いた古代中国人の叡智の結晶です。

漢方製剤

一般に漢方というと、草根木皮の類を煎じて飲むものと思われがちで、ゲンノショウコやセンブリを煎じて飲む民間薬物療法と同一視されがちですが、これは誤りで、漢方には厳然たる医学理論があり、民間療法とは質的に異なります。医学理論に基づく天然の薬物の配合剤を漢方製剤と云います。

生薬製剤

漢方的根拠なく民間療法から経験的に処方を導き出した民間伝承薬を生薬製剤と云います。

普導丸は、経験に基づき処方を導き出した民間伝承薬(百草・百草丸)の製造・製造販売業者である日野製薬が漢方的な考え方の要素をとり入れて独自に開発した民間伝承の生薬製剤です。

薬物と食物
薬食同源

東洋における食文化の一つとしての思想。薬物と食物はその源が一つであるという考え方。

未病医学

中国古代からの叡智である食養の思想。日常の食事によって病気にならない体力づくりをし、さらに健全な精神をも養うという考え方。

薬膳

中国では古くから滋養強壮の目的で、また病気の治療効果を高めるために、漢方薬を料理と組み合わせておいしく食べる技術がありましたが、これが薬膳です。薬膳には病気の治療を目的とする「食療」と、未病の状態を保つ、すなわち病気にならないようにする「食養」の二面があります。

食物がもつ四つの価値
  • 食品価値
    美味しい、香ばしい、美しい、歯ごたえがよい等、料理人的発想の側面
  • 栄養価値
    現代栄養学的見地からの側面
  • 薬理価値
    自然科学(医学・薬学・病態栄養学)の進歩によって食物にも現代栄養学でいう栄養価値以外の効用、つまり、薬理効果があることがわかってきました。たとえば、ワサビの殺菌効果、緑茶の覚醒効果です。日本では大豆と昆布を組み合わせて食べる習慣がありますが、大豆は甲状腺肥大作用、海藻にはこの副作用を消す作用があります。生活の知恵により、このようなマイナス面を打ち消し、補い合うという食の一面をみることができます。
  • 食効価値
    本質的には薬理価値ですが、現代薬理学では未開拓の分野です。漢方的な食の側面であり、重要な食文化でもあります。体を温める、体を冷やすなどというのは、食効価値の一つです。

黄帝内経素問(こうていだいけいそもん)によれば、陰陽のバランスが崩れたときは、それを是正する反対の薬性、食性をもつ薬物もしくは食物で中和正常化する。原則として、陰には軟、濡の作用のある鹹、辛、温の薬食を用い、陽には清涼、堅硬(けんこう)の作用のある苦、寒の薬食を配合します。薬物にも食物にも性味があり、五つに分類し、この五味(五つの味)と五性(五つの性質)は、薬の処方や薬膳の基本となるものです。

五味五性の効用は次の通りです。

料理でも漢方処方でも、これらの組み合わせを正しく用いれば効果がありますが、誤るとかえって害の作用が現れます。

ところで、料理には、「酸と甘、苦と辛、甘と鹹(かん)、辛と酸、鹹(かん)と苦」というように、二味を組み合す原則があり、相互の味を中和しておいしく食べられるようにするのが料理、特に薬膳の秘訣です。

しかし、薬物、食物の性味の問題は、いまだ科学的な証明ができていませんので、今後の課題でもあります。

古代中国の医学書
傷寒論

(しょうかんろん)

古代中国医学の聖典とされ、今日まで最高の評価を得ている。後漢の頃に張仲景により著された。

金匱要略

(きんきょうようりゃく)

傷寒論と対になった慢性的な病気の治療法を著した書。張仲景により著された。

神農本草経

(しんのうほんそうきょう)

中国の漢の時代に出版された中国最初の薬学専門書。薬を上品(毒がないので長期の連用が可能)中品(毒の有無を知って適宜用いる)下品(毒が多いので長期連用不可)の三品に分類しています。薬膳に配合できる漢薬の大半は上品です。

尚書

(しょうしょ)

儒教の聖典の一つに数えられる中国の古典。一般に書経と称され、陰陽五行説の根本思想がここにあり、中国医学における人体小宇宙論の根元となるがあるのである。

黄帝内経素問

(こうていだいけいそもん)

中国医学の最古典。陰陽五行説が記されており、今日でも中国医薬学の理論の基礎。

出典:富山医科薬科大学難波恒雄教授NHK人間大学「漢方・生薬の謎を探る」から抜粋

医薬区分で探す

お悩みから探す