石黒和佳子社長ブログ
日野百草本舗 奈良井店を彩る人々と建築 ~山下勝彦さんによるキハダ・カウンター~

「日野百草本舗 奈良井店を彩る人々と建築」として、Bee's Design 代表 山下 勝彦さんによるキハダ・カウンターをご紹介します。
1. キハダ・カウンターとは
キハダ・カウンターは、奈良井店の中庭を臨むキッチンに設置されたカウンターで、天板に木曽の開田高原産のキハダを用いています。
キハダはミカン科の落葉高木で、その樹皮オウバクは弊社の百草、百草丸の主原料です。弊社は創業者の時代から、キハダ苗木を配布していました。それを今らから35年ほど前に植樹いただき成木となったものを、所有者の方のご厚意で、2023年に弊社にお譲りいただきました。弊社が国内産キハダを用いた薬づくりを目指し「キハダ一本から買います」活動を行っていることを知った方が、仲介してくださったものです。その貴重なキハダは同年6月24日に皮むきを行い、材は本社に保管していました。
このたび、奈良井店のリニューアル・オープンに向けて、Bee's Design 山下 勝彦さんにその材を製材し、黒レジンでつなぎ合わせ、長さ約4mの天板としていただきました。キハダらしい黄色味を帯びた温かな色合いと、美しい木目は、中庭からの光を受けて輝き、キッチンの中心的な存在となっています。
2.製作者
Bee's Design 代表取締役社長 山下 勝彦 氏 (カウンター天板の製作)
3. 製作の経緯
キッチンの設計は難航していました。機器、レイアウトから材質まで中々決まることなく時が進んでいきました。キッチン・カウンターについても、石、タイル、ステンレスと様々な材質案の中で決まらずにいました。木材のカウンタートップにしよう、と方向性が決まったのは2025年5月後半、当初の竣工予定日から既に1ヶ月を切った時であったと思います。
折角ならばキハダの一枚板が良い、と当初考え、方々探したが、見つかったものは設計のサイズ要件に合わず、非常に高額でした。また設計の関係上、カウンターの途中に柱があるため、折角の一枚板を途中で切る必要があります。更にキハダを用いるならば、平素よりキハダの取り組みを実施している弊社に縁のあるキハダ、または木曽のキハダが良いが、見つかったキハダは他県産でした。そのようなキハダを用いるのはどうか、と頭を悩ませました。そして頭に浮かんだのは、弊社に保管していた木曽の開田高原のキハダでした。
このキハダは、2023年に皮むきをさせていただいたキハダです。昔、日野製薬の創業者で祖父の日野文平の時代に、キハダ苗木を配布していました。それを約35年前に、開田高原の末川沿いの所有地に植樹してくださった方があります。弊社では国内産キハダを用いた薬づくりを継続するため「キハダ一本から買います」活動を実施しています。それを日頃よりお世話になっている林業従事者の方が知り、植樹いただいた方に声をかけてくださったところ、元々日野製薬の苗木だからいいよ、と快くお譲りいただけることになりました。そのような有難いご縁のキハダです。皮むきをさせていただいた6本のキハダ中、2本は胸高直径39cm、及び、29cmもあり、大変立派でした。むいた樹皮の輝くような黄色、光を発するような白色の材は神々しく、御神木のようであり、祖父の思い出と、それをお譲りいただいた方への感謝ともに、材を本社に持ち帰り大切に保管していました。
そのキハダは、大切であるがゆえに使い道が決まることなくそのまま保管されていました。このたび奈良井の家に用いて良いのか、不遜ということはないか、と、これも散々逡巡しました。しかし樹皮の部分がそうであったように、材も素晴らしいご縁をもたらしてくれるのではないか、祖父の長女である母のことを考えても奈良井の家に用いるのが良いのではないか、と考え、使うことを決めました。
加工をお願いしたのは、Bee's Design代表の山下勝彦さんです。山下さんは木曽の出身で、御嶽山の強力(ごうりき)をしながら、アーティストとして活動され、地域内外で様々な作品づくりを行っている方です。マグマのような生命力にあふれ、描かれたもの、表現されたものが生きているような作品は、山下さんご自身の包容力のある人柄がそのまま現れたようです。このたびのキハダの大切さをお伝えした時に、それをご理解いただき、良さを活かした作品づくりをしていただけるのは山下さん以外にない、と考えました。
納期が短く、大変な仕事であるにも関わらず、山下さんはひとつ返事で受けていただきました。本社まで丸太を引き取りに来ていただいた際、これまでの経緯や設計図の詳細をお伝えすると、それは大事なキハダですね、分かりました、何とかやってみます、といつもの人懐っこい笑顔で答えていただきました。そして重たい丸太を一人でひょいと持ち上げ、車に乗せて、帰っていかれました。その様子に山下さんにお預けして良かった、必ず良いものに仕上げていただけるに違いない、とほっとするとともに、祈るような気持ちとなりました。
キハダ・カウンターのサイズ要件は、長さ約4.3m×幅55cm×厚さ5cmでした。丸太は皮むきのため、約2mの長さに玉切りされています。山下さんは、丸太を製材し、曲がりが生じないように補強した上で、丸太と丸太の間を黒いレジンでうめていただきました。黄色味を帯びた温かなキハダ材の中央に、太く凛とした黒レジンの一筋が走り、本当に美しく、素晴らしい、世界に一つしかないキハダ・カウンターが出来上がりました。
レジンの色を黒にしていただいたのは、山下さんのアイディアです。後に、奥様の恭子さんに後に伺ったところ、弊社はキハダの樹皮の黄色を大切にしているため、レジンも黄色を希望するかもしれない、一度聞いてみた方が良いのではないか、とご提案くださったそうです。しかし山下さんが断固として黒が良いとおっしゃったそうです。様々な作品を手掛けてこられた山下さんのインスピレーションが黒以外にない、と思わせたのではないかと思います。百草・百草丸の色も黒であり、弊社らしさも感じます。黄色味を帯びた材とのコントラストも素晴らしいです。
開田高原の、あの神々しいキハダが、新たに命を得て、奈良井の家に帰ってきてくれたようです。キッチンの中央に堂々と存在する様子は、生命力にあふれ、輝いています。そこにいる人々を温かな、包容力で支えてくれる、骨太の素晴らしいキハダ・カウンターが出来上がりました。山下勝彦さんには心より感謝しかありません。
4. 最後に
キハダ・カウンターをご覧になられたい方は、店頭のスタッフにお声がけください。


