生薬とともに

キハダ植樹 2025年

hino_blog_250518_kihada1.jpg(キハダ植樹 2025年)

 5月18日、キハダ植樹を行いました。

 弊社は、信州木曽の伝統薬である百草、百草丸、普導丸をはじめとする生薬製剤を製造、販売しています。これらの生薬製剤の主成分はミカン科落葉高木のキハダの周皮を除いた樹皮である生薬オウバクです。これらの生薬製剤をつくり続け、未来へ継承するために、良質なキハダを欠かすことはできません。弊社では、古くからキハダ植樹を行ってまいりましたが、2021年からより大きな規模で植樹を開始し、今年で5年目となります。

  

 今年は80名を超える方々にお集まりいただき、木祖村の鳥居峠ふもとに約1000本の苗木を植樹しました。県内外から多くの皆様にご参加いただき大変感謝しております。またご支援、ご協力いただきました行政、団体の皆様へ、心より御礼申し上げます。

  

 今年もキハダ、及びキハダ以外の樹種を含む「混交林の植樹」に取り組みました。混交林とは2種以上の樹種からなる山林を示します。弊社は、良質なキハダを育て、生薬原料として収穫するのみならず、木曽川源流の里である木祖村において、豊かな森林を育み、森、土、水の恵みを守り、郷土の素晴らしい里山や暮らしを未来へつなぐことに、少しでも貢献することができればと願っています。

  

<植樹の一日レポート>

■植樹

 前日は、朝から大雨が降り心配していました。当日の早朝、地面に大きな水たまりができ、まだ小雨が降っていました。

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しかし重い雲が動き、徐々に晴れました。社員全員で本社に集合、朝礼を行い、植樹地に向かうと、朝日が昇り、植樹地全体に日の光が明るく差し込み、大変有難く思いました。8時を過ぎた頃から徐々に参加者の方々が到着され、9時に開会式、9時半から植樹を開始しました。素晴らしい天候に恵まれました。

  

 参加者は、3歳から70代まで幅広い世代の方々で、木曽地域の方や遠くは東京や大阪から足を運んでくださった方もありました。植樹が初めての方、これまで参加したことのある方など、様々な方々がいらっしゃいました。四つの班に分かれ、各班の専門家*の方から植樹方法や注意事項についてご指導をいただいてから、一斉に植樹作業を開始しました。まずは斜面下のキハダ林エリアを植樹しました。今年のキハダ苗木もとても立派でした。根はごぼうのように太く、長さは1メートルを優に超えていました。地中に穴を深く掘らなくてはならず、大変でした。しかし参加者の皆様は、汗をかきながら一生懸命に作業をしていただきました。

  

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 10時半頃一度休憩し、その後は、斜面上部の混交林エリアの植樹を行いました。あらかじめ竹棒に樹種ごとのテープをつけてありました。青がヤマザクラ、ピンクがイロハモミジ、オレンジがエンジュ、白がエゴノキです。各苗木は、キハダほどの大きさではなく、エゴノキはポット苗でした。キハダ植樹と比べて少し気分転換になったのではないかと思います。混交林エリアの植樹はスムーズに終わりました。その後、まだ植えられていないエリアにキハダを植樹し、12時には植樹が終わりました。「疲れたけど貴重な経験だった」「とても楽しかった」「また来たい」「来年もきます」とおっしゃる皆様の清々しい笑顔にほっとし、無事安全に作業が終えられて何より良かったと思いました。

  

  

■昨年の植樹地の見学

 植樹後に、全員で昨年の植樹地を見に行きました。今年の植樹地から森をぬけて徒歩5分ほどのところにあります。森に足を踏み入れるとひんやりとし、カラマツやアカマツの樹下に大きなシダ植物や低木が生え、心地よい空気に包まれていました。途中、天然更新の小さなキハダ1本あり、ご覧いただきました。その上を見上げると、樹冠が開け、日の光がそこだけ差し込んでいました。ここ1, 2年の間にそこに生えていたカラマツかアカマツが伐られたのでしょうか。早速、陽樹のキハダが芽を出したのは面白いことです。そのキハダのすぐ横に、ヤマウルシも芽を出していました。とても似ている2つの稚樹の違いや見分け方について専門家の方がご説明してくださいました。

  

 昨年の植樹地では、キハダ、及び、ヤマザクラ、イロハモミジ、エゴノキが元気に芽を出していました。参加者の皆様はとても喜んでくださいました。昨年参加された方はご自身が植えた苗木がどうなっているか、今年初めての方は一年後にどうなるか、興味深くご覧いただいたようです。「ものすごく感動した」「一年でこんな風に大きくなるのですね」「昨年自分が植えた苗木が大きく育っていてうれしかった」と口々におっしゃってくださいました。育った木の横に立って写真を撮っている方もありました。

   

■「森の先生」よりお話

 その後、木曽山林協会 松原秀幸 事務局長より、鳥居峠に生える植物や、森が水を育む仕組みについてお話をしていただきました。松原事務局長は、木祖村のご出身で地域の植生や生き物についてとても詳しい方です。優しく温かな語り口調で、シラカバやコシアブラについて、実物を見せながら教えていただきました。また、なぜ豊かな森林が、清らかな水を育み、土砂災害などを防止するか、ポケットからスポンジを取り出して土壌の仕組みを模しながら、ご説明していただきました。参加者の皆様は、車座になって、熱心にお話を聞いていました。

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■昼食

 集合場所にてお弁当をお配りし、お好きな場所でお弁当を食べていただきました。日差しは暑いですが、爽やかな風が吹き、木祖村の風景やのんびりした雰囲気を参加者の皆様が楽しんでくださったようです。

  

■会社案内

 午後は、ご希望される方々に本社にお集まりいただき、会社案内を行いました。なぜキハダを植樹するのか?を知っていただき、またミニ・オープンファクトリーのような形式で弊社を楽しんでいただきたいと考え、昨年から始めた取り組みです。

  

 最初に「日野製薬クイズ」を行い、答え合わせをしながら百草・百草丸、生薬についてご紹介しました。10問全問正解の方が5名いらっしゃいました。弊社製品をプレゼントさせていただきました。

  

 また、なぜ植樹するのか?及び、昨年から開始した弊社のキハダプロジェクトについてご紹介を行いました。午前中汗を流して取り組んでいただいた植樹は何のためであったのか、皆様と共有することができたのではないかと思います。また、既に発売済の製品や現在開発中の製品について、手に取ってご覧いただきました。

 更に、信州大学農学部 准教授 梅澤公二先生に「「農DX教育研究推進拠点 教育部門」の紹介 今後のキハダ植生分布や成長過程の調査へ向けて」をテーマにご講演を行っていただきました。信州大学の農DXへの新たな取り組みや画像解析からできることを教えていただき、大変大きな学びをいただきました。

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■最後に

 素晴らしい天候に恵まれ、多くの皆様とご一緒にキハダを始めとする樹種を植樹し、森の始まりの時をともに過ごすことができ、大変有難く感じております。植樹が終わった後、白くフワフワとした雪のような、綿毛のようなものが空から舞い降りてきました。日の光を受けてきらきらとした様子がとても美しく、植樹作業の安全無事に感謝の気持ちで一杯となりました。改めまして、今回ご参加いただきました多くの皆様、開催のためご支援・ご協力いただきました多くの方々に心から感謝申し上げます。

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