生薬とともに
子ども達とキハダ植樹体験学習 2025年

5月13日に木祖小学校5年生、及び木祖村もいちど小中学生の皆様とキハダ植樹体験学習を行いました。キハダ植樹体験学習は、源流の里である木祖村に住む子どもたちに、木曽の豊かな自然の恵みの素晴らしさ、その恵みや人々のお陰で今日に伝わる百草・百草丸のこと、生薬のこと、源流の森や暮らしを守ることの大切さを伝えたいと願い、2022年4月から開始し、今年で4年目となりました。また2023年から、木祖村在住のご年配者が、もう一度(木祖村ではもいちどと言います)小中学校を体験する木祖村教育委員会生涯学習事業への参加者の皆様も出席されています。子ども達の明るい笑顔や、ご年配者の温かなお言葉に毎年元気をいただきますが、今年も楽しく、思い出深い日となりました。
■生薬あてクイズに盛り上がる
キハダ植樹体験学習では、初めに日野製薬本社で学習を行います。百草・百草丸のこと、生薬のことを学習し、生薬あてクイズを行いました。生薬あてクイズでは、日野百草丸に配合する7種類の生薬について、色、香り、味などから生薬名をあててもらうクイズです。毎年とても盛り上がります。最近の子どもたちは日常生活で苦味を感じる機会が少ないようです。しかし苦味は人の消化管の働きを活発にします。「良薬は口に苦し」を実体験してほしいと考えクイズを実施しています。今年も「苦い!」「うぇー」と言いながら、大盛り上がりでクイズに参加してくれました。
■「百草丸好き!」
休憩時間になると、展示していた生薬瓶や薬研に興味を持ち、子どもたちが展示台の周りに集まりました。薬研では実際にゲンノショウコをすりつぶして楽しみました。また百草丸や普導丸に配合された生薬一つ一つの香りを嗅いでこの香りは好き、これは嫌いと口々に教えてくれました。最終的にケイヒとエンゴサクが良い香りとの結論を子ども達が出しました。ケイヒはシナモンですので、甘い香りが喜ばれたようです。エンゴサクは子どもたち曰く、焼きとうもろこしの香りがするということでした。
「こんなに良い香りの生薬を混ぜて薬にするの?」「私もお薬を作りたい」「大きくなったら日野製薬に入ろうかな」と言っていただき、大変うれしく思いました。もちろん!是非いつでも入社してほしいです。
そして「百草丸好き!」「いつも百草丸飲んでいるよ」と言っていただく子ども達もあり、驚いてしまいました。「でも苦いでしょう?」と聞くと「苦くない、私は好き」と言っていただきました。小さなお子さんから「百草丸好き!」という言葉をお聞きするとは・・・。うれしさと感激で顔がにやけていたと思います。
■ウッドフラワーづくりに初挑戦
その後、今年初めての取り組みとして、ウッドフラワー作りのワークショップを行いました。長野県北相木村からキノハナKinanoさまをお招きし、かんなで削った薄い木からカーネーションを作り、キハダの残渣*で黄色く染める体験ワークショップを実施いただきました。子ども達に、木材に手で実際に触れながら、森林には多様や用途や機能があることを伝えたいと願い実施しました。
カバ、マツ、ケヤキなど様々な樹種を準備していただきました。かんなで薄く削った木材は、それぞれ異なる色と木目をしていて面白いと思いました。各自が思い思いに木を選び、一生懸命、花を形づくる作業に取り組んでいただきました。カーネーションが出来上がったら、あらかじめキハダの残渣から煮出した黄色い染液にボチャンとつけて、余分な染液を落とすと、黄色いカーネーションが出来上がりました!かわいらしいカーネーションが部屋中に並びました。その後、乾燥しブーケにして、子どもたちをはじめ参加者の皆様へプレゼントしました。とても喜んでくださいました。
■未来へ向けて
未来へ向けて、なぜキハダ植樹を行うのか?を子ども達に説明しました。森林には、多様な生き物の住む環境の提供、水源涵養、土砂災害を防ぐなど、様々な働きがあり、キハダ、キハダ以外の樹種を含め、木曽の森林を守り育てることの大切さを子ども達に伝えたいと考えていました。少しでもそのことが伝わったのであればうれしいことです。
■キハダ植樹
その後、いよいよ植樹に出かけました。キハダは日野製薬本社と木祖小学校の間の山林に行います。班ごとに移動いただき、専門家から植樹方法のご指導の後、実際の植樹作業を始めました。今年のキハダの苗木は立派で、地中には根や石ころがあり、穴を奥深く掘るのは大変だったと思います。しかし子供たちは一生懸命取り組んでくれました。根っこの長さと穴の深さを見比べて、まだもう少しだと言いながら頑張って穴を掘ってくれました。1人1本ずつの植樹でしたが、まだ植えられる子どもたちには2本植樹していただきました。疲れたと思いますが、楽しかったと言ってくれました。閉会式を行い終了しました。
■最後に
源流の里である木祖村の子供たちに、木曽にはたくさんの宝物がある、一緒に守っていきましょうと伝えたいと考え、キハダ植樹体験学習を実施しています。25年後に子どもたちが植樹してくれたキハダで百草を作り、プレゼントするのが日野製薬の私たちの夢です。その頃大人になった子どもたちが天然のタイムカプセルのようにキハダの生育状況を確認するために木祖村へ戻り集まってくれるといいなと思っています。またその時、住む場所は県内外と様々と想像しますが、郷土への熱き思いを持ち、どこに住み働いていたとしても、源流の森を守ることに力を貸してくれたらと願っています。
ニコニコしながら手を振って帰っていく子どもたちに、大きな希望をいただいたキハダ植樹体験学習でした。
※キハダの残渣:百草・百草丸の製造に使用した後のオウバクの残留物のこと