生薬とともに
【6月30日木曽の未来へ】座談会を開催しました!
日野製薬株式会社は、6月30日、一般社団法人サーキュラーコットンファクトリー代表理事 渡邊智恵子氏、株式会社 布 代表・ディレクター 須藤玲子氏、染司よしおか 六代目当主 吉岡更紗氏をお迎えし、座談会を開催しました。
日本を代表する三名の女性リーダーの皆様は、キハダがつなぐご縁により、木祖村までお越しくださいました。前日には開田高原においてキハダ皮むきにも参加いただきました。「一人ひとりが豊かに活き活きと暮らす木曽の未来へ」をテーマとした本座談会には、県内外、近隣市町村より多くの方々がご参加くださいました。
ご登壇いただき、心を込めて真摯に、時に熱く素晴らしいお話をしてくださいました三名の皆様、メモを取りながら熱心にお聴きくださいました参加者の皆様、そして開催にあたりご支援、ご協力いただきました多くの行政・団体・事業者の皆様に、心より厚く御礼申し上げます。
日本および世界で活躍される三名の皆様は、揺らぎのない信念でものづくりに取り組み、良いものを妥協なき心で追求し、素晴らしい感性と精神性で、時代に先駆けて、普遍的な良さ、人としてあるべき営みを求め、新たな道を切り開かれてきた方々です。本座談会では、これまでどのようなことを考え、どのような仕事をされてきたのか、日頃大切にされていることは何か、など、ご活躍の原動力の一端をお聴きする機会をいただきました。いくつかのお言葉をご紹介します。
Q:キハダ皮むきはいかがでしたか?
(渡邊様)生きている木を使うということを実感した。これは命を拝借するということ。しかし申し訳ないという気持ちではない。この命をしっかり使わせていただきます、という覚悟だ。
(須藤様)伐採した時にミカンのような香りが辺り一面にふわーっと香った。皮をむく時にヒャク、ヒャクと何ともいえない心地よい音がした。皮はとても鮮やかな黄色。天然のものからこの黄色が得られるのが本当に素晴らしい。昨年も皮むきを体験したので、今年は葉の採取を中心に行った。
(吉岡様)キハダの黄色の美しさに驚いた。キハダは古くから染料として用いられている。私どもの工房では、植物染めを行っているが、植物は何でも使うわけではない。そこには信念があり、古来より文書または実際のものが記録として残っているものしか使わない。先人の試行錯誤をした結果を大切にしている。キハダは古くから使われており、正倉院にもキハダで染められた紙が残っている。キハダは和紙を染めるのによく使っている。
Q:日頃のものづくり、仕事をどのような思いで行っていますか?
(渡邊様)私はオーガニックコットンを長年手掛け、今は繊維ゴミから紙を作る仕事をしている。須藤さんは布、吉岡さんは染色と、繊維に関わるこれだけの人がここで集まるというのは偶然ではない。木祖村から繊維とオウバクで発信していくのはどうか?
(須藤様)これって何?という好奇心を大切にしている。デザインは一人ではできない仕事。日本全国に職人さんがいて、その方々との協働作業。話し合うことが大事。職人の方々にこうしたいと伝えると「まかせてくれ」と言われる。これが日本ものづくりの素晴らしさ。それで布づくりができている。
(吉岡様)古来より染料となる植物は薬でもある。そして色と薬効にも関係がある。黄色い植物は胃腸に良い、赤い植物は血流を促す、など。この仕事をするようになってから、身体を壊すことが少なくなった。健康でいられる仕事をするのが良いのではないか。また色々な人とのつながりを大切にしている。
Q:人とのつながりについてどのように感じていらっしゃいますか?
(渡邊様)人との出会いは偶然ではない。大きな力で動かされている。私がここへ来たのも好き嫌いではない。この出会いは何かにつながると思う。
Q: 木曽は、全国各地と同様に、少子高齢化、労働人口の減少が進んでいます。木曽、そして日本の未来にご意見をお願いします。
(須藤様)木曽は緑が深く美しい場所。外から来たものが言えることは少ないが、今いる人たちが良さを見直して認識することが大切ではないか。そしてそれをどうアピールするか。地域にいる人たちが考えることが大事だと思う。
(吉岡様)今の仕事に就いてから、愛媛県で2年間修行をした。人の少ない集落に住み、織姫さんと呼ばれながら、地域の方々に大変よくしていただいた。その土地に昔から住む人だけでなく外から来る人も含めて、ともに発展していくことができると良いと思う。
(渡邊様)木祖村を女性が輝く村にする。様々な事業者がいる。会社を大きくし、村とともに保育、学童、介護を充実させ、女性が安心してキャリアを積んでいくことができるようにする。そうすると外から自然に人が集まってくると思う。
また座談会の後半には参加者の皆様にご発言をお願いしました。木曽地域の未来を思い意見を述べ、質問される皆様のお言葉も、大変心に残りました。その一部をここでご紹介します。
(湯川酒造店 十六代当主 湯川尚子様)若い頃、一度木曽から出てから戻り、今まで会社の代表をしている。会社が成長するために、足元の地域活性化が非常に重要と感じている。今の時代は「差別化」より「個性化」。地域にある良いものを見直し、発信していくことが重要。地域の中でコミュニケーションを取りながら頑張っていきたい。
(Local Design LEGO 古畑絵里様)5年前に薮原宿未来プロジェクトが立ち上がった。その頃から、徐々に状況が変わり始めているように感じている。今日の座談会で大きな力をいただいた。木祖村だけでなく木曽郡全体で取り組むことが大切ではないか。
(木曽土建工業株式会社 小野寺直人様)自分は木曽の出身ではなく、数年前に他地域から来て住み始めた。木曽では少子高齢化が進んでおり心配している。外部の方から見て、木曽の良いところは何か?発展のためにどうしたらよいと思うか?客観的なご意見をお聴きしたい。
(木祖村 村議会議長 栗屋正一様)日本を代表する女性リーダーの方々に木祖村までお越しいただき大変光栄だ。皆様のご意見を参考に、今地域に既にあるものの良さを見直し、村の発展に尽くしていきたい。
(株式会社やまとわ 代表取締役社長 中村博様)全国的に人口減少が大きな懸念となっているが、人口減少は本当に問題なのか考えても良いと思う。フィンランドは日本とほぼ同じ面積に550万人が住んでいる。しかし非常に豊かな暮らしを実現している。人口が少なくても豊かに暮らす方法を模索していくべきだと思う。キハダプロジェクトに感銘を受けた。一緒にできることがあれば取り組みたい。
ご登壇された皆様には、核となる信念があること、何事にも感謝の気持ちで臨まれていること、チームワークを大切にされ、周りの方々に大きな愛情をお持ちのこと、良いものを見極める素晴らしい目をお持ちでいらっしゃること、そして不断の努力を積み重ねられ、明るく前向きでいらっしゃることなど、いくつもの共通される素晴らしさを感じました。また「未来への継承」が皆様の念頭に常にあるのではないかということも感じました。
また参加された木曽地域の皆様のご発言からは、木曽地域への熱い思い、未来に向けて多くのことを考え、実際に行動されていることを感じました。思いを同じくする仲間がいることに大変心強さを感じました。今後コミュニケーションを取りながら地域の未来をともに切り開いていくことができればと思います。
座談会を通して、自然の恵みの素晴らしさと厳しさ、これに感謝し用いることの大切さ、地域に古くから伝わり今あるものの良さを再認識し、輝かせることが未来への継承につながることなど、多くのことを学ぶ機会となりました。司会をしながらメモを取る手を止めることができませんでした。ご登壇者、参加者の皆様から大きな、大きなお力をいただき、本当の豊かさとは何か、考える機会をいただいたように感じています。
ご登壇いただいた三名の皆様、ご参加いただいた皆様、開催にあたりご支援、ご協力をいただきました皆様に心より深く感謝申し上げます。
(【写真】1枚目:渡邊智恵子様、2枚目:須藤玲子様、3枚目:吉岡更紗様、4枚目:石黒和佳子)
※渡邊様、須藤様、石黒和は吉岡更紗様製作のキハダ染めスカーフを身に着けて登壇
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