縁(えにし)
2014年5月
今年の冬は零下10度以下の日が多く、大雪が降って大変でした。住居は江戸時代に木曽十一宿の一つの奈良井宿にあり、当時の宿場の面影が残っているので、「重要伝統的建造物群保存地区」に認定されています。雪が降ると旧街道(中山道)に面した家の前の雪掻きをします。以前は掻いた雪を家の前にためていましたが、なかなか融けず、車や観光客の通行の邪魔になるので、最近は隣組の中で小型トラックを持っている人が車を提供し、搔いて溜まった雪を皆で協力して荷台に乗せて、裏の小川に捨てるようになりました。この冬の1メートル近く雪が積もった大雪の時も、日曜日の朝から隣組の協力体制で雪かきをして2時頃には、通りの雪が全くなくなりました。隣組の良さ、大切さを改めて感じました。
連休に入ってから会社のある木祖村の桜が満開になり、5月に入ってかららしだいに木々が芽吹いて、目に鮮やかな緑に覆われてきました。
弊社の本社や直営店が所在する長野県木曽郡は、人口が3万人を下回り、65歳以上の占める割合が37.2パーセントです。木曽地域には年をとっても元気な方がたくさんいますが、やはり高齢化が進み若年層が減少してくると、地域の活力の低下と後継者不足が懸念されます。
この木曽地域の未来を明るくするために、「未来の子供たちが住みたくなる木曽」にするにはどうしたらよいかということを、木曽の有識者と信州大学の産学官連携本部の先生方と検討を重ねてきました。
一方で、昨年ユネスコエコパークという制度があることを知りました。文部科学省の資料によると、「世界自然遺産が、顕著な普遍的価値を有する自然地域を保護・保全するのが目的であるのに対し、ユネスコエコパークは、生態系の保全と持続可能な利活用の調和を目的としており、保護・保全だけでなく自然と人間社会の共生に重点が置かれている。」と定義されています。ユネスコエコパークの対象範囲には、厳格に保護か長期的に保全する「核心地域」、核心地域を護るために取り囲んでいて、教育、研修、エコツーリズムに利用できる「緩衝地域」、住民が居住して地域社会や経済発展が図られる地域から成っています。ユネスコエコパークは1976年にユネスコが開始した制度で、2013年5月現在の登録総数は117カ国621地域で、日本のユネスコエコパークは1980年に登録された、「志賀高原」(長野県、群馬県)、「白山」(石川県、富山県、福井県、岐阜県)、「大台ケ原・大峰山」(奈良県、三重県)、「屋久島」(鹿児島県)、及び、2012年に登録された宮崎県の「綾」の5か所があります。さらに、昨年推薦を受け、今年登録される見込みの南アルプスと只見があります。日本では知名度が低いですが、2012年から新規登録が続いているので、次第に注目されるようになると思います。
木曽は森林面積が93.3%を占める自然が豊かな地域ですが、国立公園・国定公園に指定されている場所はありません。この原因は、安土桃山時代には木曽の檜などの木材が乱獲され、禿山のようになったことと、江戸時代に木曽を治めていた尾張藩は森林を保護するとともに林業にも力を入れており、明治時代以降も御料林、国有林として森林資源の利用が続いてきたことによると思います。このため、木曽の世界自然遺産登録を目指すことは無理と思っていましたが、ユネスコエコパークは自然と人間社会の共生に重点が置かれているので、木曽の実情に合う制度であると感じました。そこで、木曽のユネスコエコパーク登録を目指して2月から検討委員会を発足して検討を開始しました。
登録申請のためには、対象区域を定める必要があります。昨年度から中部森林管理局は「木曽地方における温帯性針葉樹林の保護・復元に向けた取り組み」を開始しました。上松町、王滝村、大桑村にある国有林が対象になります。更に、「御岳県立自然公園」は木曽町・王滝村にある保護・保全区域です。これ以外に、木祖村の「水木沢天然林」、南木曽町の「蘭」も含めれば木曽郡全域を対象区域にすることができます。登録申請は対象区域の町村長の連名で日本ユネスコ国内委員会MAB計画分科会に申請することになるので、近々検討結果を町村長に報告し、行政・民間の推進体制を築き、是非登録を実現したいと思っています。