木曽の便り
有明の月
有明の月とは広辞苑によると「夜明けになお空に残る月」とあります。
一月の朝7時頃に御嶽山の上に満月が残っている写真を撮ることができる日があります。その日が晴れていることが条件になるので、中々シャッターチャンスはありません。右の写真はその一瞬を捉えた写真です。(撮影者 倉本豊氏)
江戸時代後期まで75日ないしは100日の重潔斎をした行者・道者だけが御嶽山に登拝できたのを、黒澤口から一般人が登れるように開いた尾張の覚明行者と、王滝口登山道を開闢された埼玉の普寛行者が、有明の月を詠んだ歌があります。
「露の身の消えて果かなくなりぬとも 名をば御嶽に有明の月」 覚明行者
「なきがらを何處の里に埋むとも 心中御嶽に有明の月」 普寛行者
さいたま市桜区田島にある御嶽神社の宮司で田島一心講先達の山田國光先生は毎年1月19日前後に信徒の方々とバスで寒参りにお出でになります。弊社の王滝店に立ち寄られた折に、今年は2日間とも晴天で大変素晴らしい寒参りであったというお話がありました。更に、田島御嶽神社には上記普寛行者の歌が書かれた掛け軸(さいたま市指定文化財)と普寛行者が木曽御嶽山開山後お礼参拝の折詠んだと伝えられる下記の歌があるというお話でした。
「ありがたや神の御恵み浮きいでし 武蔵の國の雷の鳥かな」 普寛行者
田島御嶽神社にはこれ以外に普寛行者の弟子の一心行者直筆の掛け軸もあり、御嶽信仰の貴重な資料を大切に保管されています。
なお、弊社の前身の日野屋には普寛行者の弟子の順明法印と一心行者の直筆の掛け軸があります。