縁(えにし)
2006年10月
私は体が続く限り、年二回木曽御嶽山に登ることにしました。御嶽神社の頂上奥社で行われる七月十日の開山祭と九月初旬の閉山祭にお参りするために登頂しますが、七月十日は梅雨、九月初旬は台風でたいてい雨降りの中を登ることになります。昨年は雨具を身に着けていたのに下着までぐっしょり濡れたにがい経験をしたので、新しい雨具を購入し、着替えのシャツ・肌着を濡れないようにビニール袋に入れた重装備のリュックを用意しましたが、今年の七月十日は絶好の登山日和で、頂上から北アルプス、中央アルプス、南アルプ、富士山を遠望できました。今年は異常気象かもしれないと心配していたら、七月中旬から下旬にかけて豪雨に見舞われました。御嶽山は雨の多いところなので、過去に弱い地盤は削り取られたのか、幸いにも登山道に被害はありませんでした。九月三日も晴れて、雲の合間に富士山を見ることができました。
百草丸は一回に20粒服用します。数えるのが大変だというお客様に計量用スプーンを差し上げています。恩師で「失敗学のすすめ(講談社)」など多数の著作のある工学院大学教授(東京大学名誉教授)の畑村洋太郎先生の『畑村式「わかる」技術』(講談社現代新書)の中で百草丸の20粒を目分量で見当つけることが定量化訓練に役立つと記述されているので、抜粋してご紹介いたします。
『私は昔から、「日野百草丸」という薬を愛用しています。これは一粒が直径3ミリくらいの大きさの生薬で、お腹が下ったときにはこれを20粒服用するのが正しい使い方です。よほど私の体に合っているのか、効きがいいのでこの薬をもう何十年も使っていますが、繰り返し服用しているうちに面白いことができるようになりました。瓶から出すとき、掌(てのひら)に載せた粒をわざわざ数えるようなことをしなくても、見当でおよそ20粒がわかるようになったのです。
これは日によって多少狂うこともありますが、 誤差はせいぜいがプラスマイナス一です。ぱっと見て「これくらいだろう」と思えるときには、19粒から21粒の間でだいたい収まっています。面白いことに、小さな薬の粒が18だと少ない気がするし、22だと多い感じがします。そんなわけで、大きく見当ちがいをすることはほとんどありません。パターン認識の一種で、おそらく私の頭の中に20粒という数を理解するためのテンプレートができあがっているということだと思います』
話は変わりますが、畑村先生から常々危機管理の重要性を教えられていますが、私は最近の痛ましい事件を見聞きするにつけ、地方ほど安全対策を万全にする必要があると確信し、本社の各部屋に許可された従業員だけが入退出できるように、カード(従業員証)読み取り式のセキュリティ・システムを導入しました。当社はお客様が服用する薬品を製造しているので、侵入者による取り返しのつかない事故を未然に防ぐことと社員に安全な職場環境を提供することは非常に重要です。
お客様に安心して当社の製品をご利用いただけるように安全対策に万全を尽くしてまいります。