縁(えにし)
2006年2月
朝、会社に行く途中の国道19号にある温度表示を見ると、零下10度以下と表示されている日が多く、零下5度くらいだと今日は暖かいと感じるから不思議である。昨年の12月には雪が沢山降り、今シーズンは大雪で大変と思っていましたが、1月からは雪が余り降らないので、日当たりの良いところはすっかり解けています。御嶽山麓の黒沢口と王滝口に当社の直営店があり、寒参りに来た御嶽信仰の信者が立ち寄って買い物をしてくれますが、「長野県北部は大雪であるとテレビで連日放送されたので御嶽山麓も大雪と思い寒参りを取りやめた人もいるのに拍子抜けだ」と言われました。
御嶽信仰の寒参り・夏参りは霊神信仰に大きく関係します。黒沢口御嶽神社の武井哲也宮司は信州の旅 第97号(平成8年7月1日発行 (有)信州の旅)の「木曽御嶽信仰の展開」の中で『霊神とは生き方が神道的な奥義に徹したことで、人から神へなることをさし、人を神として祀ることの制度化が霊神信仰である。その信仰のより所となる(死後の霊魂が鎮まるとされる)霊神碑は、現在御嶽登山道の麓から八合目にかけ二万基以上建立されており、これが御嶽信仰の大きな特色となっている。
「なきがらはいずくの里に埋むとも心御嶽に有明の月」との、普寛行者の辞世の歌にみられるように、そこには、死後霊魂は御嶽に還り大神のお側にお仕えする、という信者の願いが込められているのである。』と解説しています。御嶽教の各教会・講社は登山道沿いに霊神場を持っており、そこには沢山の霊神碑が一団となって祀られています。信者たちは供養のために夏と冬にお参りをするのです。黒沢口里宮神社でお参りをしている様子は店から拝見することができますが、寒風吹きすさび日によっては零下20度近い寒さの中を結構お年を召された一般信者の方が長時間熱心に祈祷している姿には心を打たれます。この後信者たちは霊神場や滝などを訪れ、お参りをします。滝で水行をされる先達の方もおられますが、「水が冷たく大変でしょう」とお聞きしたら、「滝の水そのものよりも足元を通り抜ける風が寒い」ということです。
日本アルプスを世界に紹介したイギリス人のウォルター・ウェストンの「日本アルプスの登山と探検(岩波文庫)」の第13章には今から100年以上前の明治二十七年(1894年)に御嶽登山をしたときに目にした御嶽教信者の登拝の様子や「お座立て」という御嶽教独特の儀式の様子が詳しく記述されています。また、御嶽信仰の源流についての考察も書かれています。是非一読されることをお薦めします。
昨年暮れに新年の飾り用にわらを編んで作った手製の船をいただいたので、船に七福神を乗せて飾ろうと思い、インターネットで七福神のことを調べたら全国各地に七福神を祀ってある場所が沢山あることを知りました。この木曽地域にも七福神を祀ってある7つのお寺があります。北から中山道沿いに寿老人(大宝寺、塩尻市奈良井)、毘沙門天(徳音寺、木曽町日義)、吉祥天(興禅寺、木曽町福島)、弁財天(臨川寺、上松町寝覚の床)、布袋尊(定勝寺、大桑村須原)、大黒天(明覚寺、大桑村野尻)、恵比寿(光徳寺、南木曽町妻籠)が祀られています。北の大宝寺から南の光徳寺まで車で1時間以上かかるので、見る時間も含めると1日がかりで回ることになりますが、木曽義仲ゆかりの寺や、見事な庭園や由緒ある掛け軸などを観賞できる寺があるので一見の価値があります。
木曽地域には豊かな自然があり、歴史・文化がそのまま残っている場所が沢山ありますが、当社の季刊誌「やまみち」とホームページの「やまみち」で紹介していきます。