生薬とともに
木祖村のキハダから教えられること
今日は木祖村の隣の日義地区へ、キハダを見に行ってきました。2月5日に木祖村の木に詳しい方に、キハダを一本から探しているとお話したところ、早速お知り合いの方にお声をかけていただいたものです。ちょっとお邪魔して話しただけなのに、すぐにそうして行動していただける。私達も見習って早く行動しなくてはと、取りも直さずお伺いしました。
教えていただいた場所に行くと、その土地を所有される方が、キハダはこれだよ、と言って見せてくださいました。大きな、立派な木です。幹の太さは、直径1メートルはあるでしょうか。大木で、枝も広がり、大変立派でした。
昔キハダは2本あってね、1本はもう枯れて朽ちちゃったけど、もう1本は残っている。でも、昔この道は水が通っていてね、山から水が出た時に崩れんように、このままにしておけ、と昔ばあちゃんから言われたから、やれないわ、とのこと。それは大事なキハダです。切ってはいけないから、是非そのままにしておいてください、と言いました。山から鉄砲水が出た時に、土留めに必要という事と思います。昔の人の知恵はすごいと思いました。
それにしてもとても立派なキハダです。もしかして樹齢60年や70年かもしれません。その生きている大木を見て、これを切って内皮を採り、百草や百草丸にする、というのは大変な責任だと思いました。
生きている木の実を採って何かにするのとは違います。内皮を採るためには木を切り倒さなくてはなりません。木の命を仕留めて、それを製品にするということです。それもキハダの木は生育するまでに25年。一番若くても20年や30年ということです。その時の長さ、命の尊さは、計り知れないです。それを製品にしている私達は、本当に責任が重い。そして、命をもらって、その命を人にお渡しするのだ、ということを忘れてはいけないと思いました。人間の命を長らえるために、木の命をもらうということ。私達は、それが仕事であることを肝に銘じて社業に臨まなくてはならないと思います。
今弊社では、生薬は原料メーカーさんから仕入れています。キハダは内皮のみ乾燥された状態で届き、それ以外の生薬は粉末で届きます。弊社の社員は、どのような様子で、生薬そのものが育っているのか、そして育った薬草のどの部分を生薬にしているのか、よくよく知る必要があります。しかし今は知らない人も多いです。これではいけない。今年から、生薬を育てる取り組みを弊社では行います。種をまき、畑に育てるということをやってみるということです。これをやることにして良かった。育てることの大変さ、その育つ様子、育った後、刈り取る前の薬草の様子を知らずして、良い百草、百草丸を作ることはできない、と改めて思います。
本当の意味での、生薬を用いた薬を作るプロ集団になれるよう、何十年かかっても取り組んでいかないとならないと心から思います。
文章・写真:WI